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No.6にマジLOVE1000%の非公式二次創作ブログ。ねたばれから変態までご機嫌よう。
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ここ数日、紫苑がなにか思い悩んでいる様子であることに、当然ながらネズミは気づいていた。気づいていた上で、過保護がすぎるような気がしてあえて放っておいた。けれどそれが幾日も幾日も続くにあたって、とうとう、もともと寛大な方ではないネズミの忍耐が切れた。別に何も言っても上の空で、なんだかないがしろにされているような気がして拗ねた訳では決してない。
「あんたさ、ここ最近何をそんなに悩んでんの」
思わず、うんざりした口調になったネズミに、紫苑はゆっくりと振り返った。不機嫌な気配を隠そうともしないネズミの顔をじっと見つめる。それからとても真剣な顔をして口を開いた。
「売春ってどうおもう」
「は」
あまりにも紫苑から不釣り合いな言葉がその唇から転がり出たことに、思わず間抜けな声をだしてしまう。
「この間街を歩いてたら、知らない男性に声をかけられた。キスと一回のフェラチオ…あ、口淫のことだよ。で、1万円、払うと言った」
「おい、あんたまさか」
「もちろん断ったよ。見ず知らずの人の性器を口に入れるなんて考えられないし、そもそも僕は未成年な訳だから、そういう性的なことで金銭を稼ぐなんて違法だ。だからその時はすぐに逃げた。けど、思ったんだ。もし僕がその1回を我慢して、それを成し遂げていたら。彼は一時間で、いいと言った。そのたった一時間の我慢で、例えば君に、君と、もっと栄養も両もある食事にありつくことが出来たんじゃないかって。ほんの少しだけ、思ったんだ。今だって、僕は君の稼ぎに依存して、君に負担を強いてる。その負担をほんの少しでも、減らせるんじゃないか、って思ったんだ」
ネズミの目をまっすぐ見つめたまま、紫苑は一息にそう言った。ネズミは不愉快そうに眼を細める。
「あんたは、それで俺が喜ぶと、そう思ってんの」
「思ってない。むしろ嫌がりそうな気がしてる」
「じゃあ」
「でもそういう理屈じゃないんだ。つい考えてしまう。もし、とか例えばの話を」
そこでネズミはふと、紫苑の手の中に握られているものの存在に気が付いた。小さくて薄い、どうやらそれは紙切れのようだった。なんども力を込めて握られたせいか、しわくちゃになっている。
「…それ、何」
「これ?うん、そう。僕がこんなくだらないことをぐるぐると考えてしまうのは多分。この紙切れのせいなんだ」
「だからそれ、何だ」
苛立った口調で再度ネズミが問うと、紫苑は握っていた両手のそっと開いた。それはやはり小さな紙切れであり、よく見ればノートか何かの切れ端のほうだった。そこに小さく、電話番号と思しき数字の羅列と、メールアドレスが書かれている。
「気が向いたらいつでもって言って、逃げる時に押し付けられた。すぐ捨てようかとも思ったんだけど、なんだか、捨てられ―――あ」
手を伸ばして、紫苑を薄暗く誘惑する紙切れを手のひらから奪い取る。ぐしゃりと握りつぶして、ランフの火に翳して燃やしてしまう。小さな可燃物はあっという間にカサカサの黒い灰になって部屋に散った。
「そんなことしなくていい」
はっきりとした怒りを孕んだ灰色の瞳と声が紫苑に刺さる。
「もし、そんなことになったりしたら俺は―――その男も、あんたも」





「絶対、許さないよ」









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ネズミと紫苑と変態とロリコンがすきです。ぴくしぶとついったひっそり。
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