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No.6にマジLOVE1000%の非公式二次創作ブログ。ねたばれから変態までご機嫌よう。
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・現代ネズ紫で別れ話。暗いよ!














あんたはいつも俺を許した。何を言っても、どんなことをしても、俺を許した。プライドばかりが高く小賢しい俺は、そうやってあんたに許される度に安堵した。あんたは優しい。俺に、ばかみたいに優しかった。そんなあんたが好きだった。そう、好きだ、好きだったけど、あの時の俺はほんの少しばかり調子にのっていて、周りを馬鹿にしていて、でもその実いちばん馬鹿だったのは俺で。つまりどういうことかというと、恋人、としてあんたというものがありながら、それを隠して色々な女と遊び回っていた。キスもしたし、セックスだって当然のように何度もした。それをとくに、俺はあんたに隠さなかった。俺のアパートで、あんたと女達が顔を合わせたことも一度や二度ではない。俺は、そういうことが、俺からあんた以外の女の気配がする度に、あんたが俺に隠れて泣いているのを知っていた。知っていたから、よくこう言った。「泣くほど嫌なら、別れる?」と。あんたが頷かないと知っていたから、そう言った。身勝手な俺の行動を責めもせず、ひたすらに耐え、物わかりの良いふりを続けるあんたに、少なからず苛立つたびにそう言って、あんたを傷つけていた。そう、傷つけている、という自覚はあった。けれど結局、あんたは俺を許すから。いつも決まったように、「…君が、嫌じゃなければ、別れないよ」と。そう言って、悲しそうに苦しそうに笑って、それでも俺を捨てないでいてくれるから。俺はますます調子にのって、あんたを傷つけ続けた。そうして少しづつ俺の前で笑わなくなっいったあんたに気づいたのは、顔と名前の一致しない女のアドレスが90件を超えた頃だった。もういい加減にしようと、さすがに思った。他の女とキスしてもセックスしてもあんたとの約束を平気で破っても、俺はまだあんたが好きだった。けれど染み付いた習慣とは恐ろしいもので、知らない女のアドレスはまだずるずると増え続けていた。もうやめよう。あと一人。あと一人で、このよく分からない女達専用のアドレスフォルダが3ケタになる。ちょうどいい。これが区切りだ。今、まさに俺に声をかけてきた、この女で最後にしよう。さっさとこの女とやってしまったら、このフォルダのアドレスを全部消して、女達も一人残らず関係を切ろう。そうしていつもあんたを傷つけ続けてきたセリフをもう一度だけ言おう。「泣くほど嫌なら、別れる?」。それでもあんたはきっと俺を許そうとするから、今度こそは俺から言おう。「別れるなんて冗談だ。ごめん、今まで傷つけて、本当にごめん。あんたが好きだよ。あんただけが好きだよ」と。そう言って、抱きしめよう。あんたは最近泣いてばかりだから、その涙をちゃんと拭ってやりたいんだ。傷つけた分、優しくしてやりたい。都合がいいって分かってるけど、もう一度だけ俺のことを許してほしい。そんなことを考えながら、擦り寄ってきた女の肩を適当に抱いてホテルに入る。視界の端にこちらを見て呆然と立ちすくむあんたを見た気がした。派手なネオンに反射して煌めいたのは、もしかして涙だっただろうか。



家に帰ると紫苑が待っていた。珍しく夕飯の準備がされていない。力ない微笑を浮かべるその目元は、今日は腫れていなかった。おや、と思う。やはりホテルに入る直前に見たのは、紫苑ではなかったのだろうか。もしあれが紫苑ならば、いつものように俺が帰宅する直前まで、泣いているはずだから。
「…おかえり」
「ああ」
「今日、どこに…行ってたんだ?」
微笑を浮かべたまま尋ねてくる紫苑に、やはりあの場面を見られていたのだろうかと考え直す。けれど、どちらでも問題はない。紫苑があの場面を見ていようといまいと、言う言葉は変わらない。今日こそは、なあ、紫苑。
「ホテル」
いつもの調子で返すと、紫苑の肩が小さく震えた。紫苑は馬鹿だ。聞けば自分が傷つくと分かっていながら、それでもいつも「本当のこと」を知りたがるのだ。けれど、それでいい。今日もそうやって、いつものように問いただしてくれなければ困る。
「…だれと?」
「女」
努めて端的に質問に答えると、微笑を張り付けたまま紫苑が俯く。わなないた唇以外は長めの前髪に隠れてしまって、表情は伺えない。そういえば、最近、あの唇にキスしていないなと思った。今日、きちんと謝ってやり直したら、これからは毎日でも、あの唇を愛でよう。紫苑を愛でよう。ちゃんと愛し合おう。そう思い決意を新たにするとと心臓のあたりが、慣れない緊張のせいかバクバクと煩くなった。
「…そうか。あれはやっぱり、君、だったんだな」
「何?あんた見てたわけ」
「うん、偶然、ね」
そう言ったっきり、膝の上で両手を握り締めたまま、紫苑は沈黙した。今だ、いよいよだ。


「……嫌なら、別れる?」


お決まりの言葉を告げる。俯いたまま、紫苑がぴくりと反応した。たっぷりと沈黙した後、その面がゆっくりと上げられる。
予想に反して、紫苑は、泣いていなかった。
むしろ、今までに見たことのないような、全てを受け入れるかのような、うっとりするほど優しい笑顔を浮かべていた。そしてその笑顔のまま、告げられた言葉に絶句する。


「そうだね…もう、そろそろ、終わりにしようか」


「は、」


紫苑の口から発せられた言葉の意味が分からずに、硬直した。いや、正確には意味を理解した上で、驚きのあまり硬直したというのが正しい。そんな馬鹿な。紫苑は今、なんと言った?

「紫、苑?」

震える喉で名を呼ぶ。紫苑は穏やかな笑顔のまま、その美しい薄紫の瞳からほろほろと涙を溢れさせた。色をなくした唇が震えている。

「ねずみ……すきだったよ、僕は、本当にきみがすきだったよ」
「しおん?」
「でも、でも。ごめ…ん、ねずみ…。ぼくは、ぼくは…もう、」
「しおん」
「耐えられないんだ」
「すきだよネズミ、好きだったよ。ほんとうに、本当に、きみのことが、すきで…」

紫苑の涙は止まらなかった。この涙はきっと、とうとう張り裂けてしまった紫苑の胸の奥から溢れ出てきているものなのだ。紫苑が泣いている。早く、早く泣き濡れる紫苑の頬に手を伸ばし、震える体を抱きしめたいと思っているのに、身体が動かない。呼吸がうまく出来なかった。紫苑を、失おうとしている。いやもうとっくの昔に、失って、いたのかもしれなかった。紫苑を失おうとしている。紫苑を、うしなう?
引き留めるための、言葉すら出てこなかった。今このとき、紫苑の中で何かが確実に「終わり」つつある。確信だった。今更、自分が何を言ってもどう引き留めても、取り返せないものが、取り返しのつかないことがあるのだという絶望。喉が引き攣る。頭の奥がガンガンと鳴って、割れそうに痛んだ。吐き気がこみ上げてきて、思わず口元を覆って俯いた視界に、影が落ちる。目の前に、紫苑がいた。かろうじて顔を上げる。お互い、ひどい顔をしていた。


「さよならだ」


触れるか触れないかの、温度すら伝わらないキスが、俺たちの終わりだった。
















紫苑が部屋からいなくなった後のことはよく覚えていない。気が付くと、床の上でに転がっていた。鉛のように重い体を無理やり起こして、部屋を見渡す。よくよく見ると、ところどころに置いてあったはずの紫苑の私物がきれいに消えていた。ふらつく足を叱咤して立ち上がる。洗面所へと移動し、少し吐いた。水道水で適当に口を漱ぎ、紫苑の痕跡の消えた部屋を見渡す。机の上に、真っ白の封筒が置いてあった。宛名もなく差し出し人もなく、封すらされていない。けれど紫苑にちがいなかった。紫苑から自分に残された唯一のもの。そっと手に取る。中身はたった一枚の、やはり白い便箋だった。









 君へ

  この手紙を君が読む頃、たぶん僕は情けなく泣いていると思う。
  最後くらい君の前ではせめて、みっともなく泣くのを我慢できていると
  良いんだけど。
  
  今まで、たくさん君に迷惑をかけたこと、申し訳なかったと思ってる。
  僕は諦めが悪いから、君の心がもう僕へ向いてないんだと分かって
  いたのに、君の優しさに縋ってしまった。
  だからもう、これで終わりにするよ。
  この、僕の情けない手紙が読まれているということは、どうやら僕の
  最後の賭けは、失敗に終わったみたいだ。
  100回のうち、1回くらいなら、僕のことをもう一度、すきだと言って
  くれるかと期待したんだけど。さすがの僕も、100回「別れよう」って
  言われればさすがに、ね。
  これ以上、君に嫌われてしまうのは、もう耐えられないから。
  お別れだ、ネズミ。
  僕はもう、君の前には現れない。約束するよ。
  君が誰か、素敵な人と幸せになることを祈ってる。
  ごめんね。
  でも僕は、ほんとうに、本当に。ううん、忘れてくれ。僕のことは全部、
  忘れてくれいいから。どうか誰よりも、幸せに。
  
  さよなら。









手に持った便箋が滴で濡れていくのを見てようやく、自分が泣いていることに気づいた。
うしなった。かけがえのないものを、俺は失った。
取り返しがつかないことをしたという遅すぎる後悔が、怒涛のように押し寄せて俺を打ちのめした。紫苑、紫苑、しおん。
100回のうち、1回でも俺があんたに誠実で素直であれたら、俺はあんたを失わずにすんだのかな。









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