No.6にマジLOVE1000%の非公式二次創作ブログ。ねたばれから変態までご機嫌よう。
俺の幼馴染は薄紫の大きな目をした、秀才の、天然で、口うるさい、けれどたまらなくかわいらしい。そんな女だった。
親同士に交流があり、初めて出会った時から彼女は俺に好意的で、優しかった。俺はというと今も昔もからかわらずのこんな性格で、実際のところ、お互いが仲良くなるまでには少々時間がかかったのだが、結果的に紫苑の根気よさとあの恐ろしい程の天然が俺の生意気さとひねくれ具合に粘り勝った。
一度折れてしまえば幼かった過去の俺にはなす術もなく、あれよあれよという間にその鮮やかな存在に惹き込まれてしまい、愚かにも俺は自覚の無いままに紫苑という、底なんか見えないほど深い深い恋の穴に落ちていた。
それ以来ずっと、抜け出すことのできない恋の底でもがき続けている。
紫苑は昔からかわいかった。彼女は時間が経つとともにかわいらしい少女からかわいい女の子になり、そして今はかわいらしい女になっていた。
紫苑という人物は、計算とか、打算とか、駆け引きとか、おおよそそういったものにはことごとく無縁で(というよりは重度の天然がそんなずる賢さを片っ端から粉砕していた)、その素直さと潔さは俺だけに限らず、周囲のあらゆる人間から好かれた。
けれど俺としては、それがたまったものではない。紫苑に、誰のものにもなってほしくない、というのはつまり自分でも笑ってしまうくらい分かりやすい建前で、本音を叫ぶなら俺のものに、俺だけのものになってほしいのだ。俺の名前を書いた首輪でもつけてやりたいと、それこそ割と本気で思っている。
じゃあとっとと告白でもするなり、通常装備の無防備を打破して押し倒すなりしてさっさと自分のものにしてしまえばいい。と、考えたことがないわけではない。というかそれこそ幾度となく考えついたことだ。主に思春期に。
紫苑は、俺のことが好きだ。それは自惚れではなく、客観的に見ても否定しようのない、まごうことなき事実だ。俺もそれについては自信、どころか確信がある。紫苑は、俺がすきだ。
ただ問題、というより俺がずっと危惧し続けてきたことがある。紫苑に俺に対する、「すき」という好意の種類だ。
常に、無条件に俺に好意的に接する紫苑だが、彼女から、他に言い寄ってくる女達のような、ある種の下心だとか、恥じらいだとか、そうにかくそういった「色恋沙汰」に関する気配を感じたことがない。
紫苑はいまだに、俺の前で平気で服を着替えるし(信じられないことに下着もだ。まぁまず止めるし、見ないけど。勃ったら最悪だ)、風呂に入ることも平気だと考えているし(実際は入っていない。ただ、赤面を期待して「一緒に入るか?」と問いかけてみたら、「うん、いいよ」と笑って服を脱ぎ出したのでこっちが赤面しその狂行を止めるという自爆を味わった)、いまだに隙あらば同じベッドで一緒に眠ろうと薄い部屋着姿で俺のベッドに乗り込んでくる。
けれどそのどの行為にも、例えばキスやセックスへの誘いを匂わすようないやらしさがないのだ。欠片も。そこにあるのは本当に、煩悩や欲望ばかり抱いているこっちが死にたくなるほどの純粋な好意と親しみ。我慢のしすぎで頭がおかしくなりそうなくらい、彼女に信頼されている。
ある時、ふと思ったことがある。もしかして、「そういう雰囲気」作るのが壊滅的に下手くそなだけで、本当はずっと、俺のことを誘惑していたのかもしれない、と。そう思ってみるとたまらなくなって、いつものようにベッドに潜り込んできた紫苑に覆いかぶさって、聞いてみた。掴んだ肩と腕の細さ、掠めた髪の香り、脚に触れる身体の柔らかさから必死に意識を逸らす。
艶も色も、自他共に認める文句なしのとびっきりの重低音で、「もしかしてあんた誘ってんの」と、髪の隙間から覗く白い耳元で囁いた。
さあどうでる、と興奮しながら見下ろした紫苑は、さもありなん。やはりというかなんというか、「え?誘うって、どこに?僕が?君を?」と、大きな瞳をまるく見開き、柔らかそうな睫毛をパサパサと瞬かせた。今時、そこらの中学生だってこの体勢と声音で意図を察するだろうに、紫苑の口から出てきたのは漫画やドラマも真っ青の、天然街道を全開で突っ走る答えだった。
その時点で心臓を馬鹿みたいに高鳴らせていた興奮は一瞬で醒め、全力で脱力し紫苑の上に倒れ込んだ俺に「重いよ、ネズミ」とか言いながら身をって胸を押し付ける(つもりは本人にはないんだろうが)紫苑を強姦しなかったのは、俺の意地とプライドと、なによりそんな彼女を、彼女が、結局たまらなく好きだという惚れた男の弱みなのだった。
欲しくて欲しくてたまらなくても、それでも、無理やり奪って嫌われたら俺はきっと絶望する。引く手数多であろうと、「女はこの世に一人じゃない」と言われようとそんなことは関係ない。今現在、俺にとって、必要な女はいつだって一人しかいないのだ。哀れなことに。
そんなことを悶々と考えているうちに、今日もそろそろ時間だ。
コンコン。
きた。見なくてもわかる。きっと今日も変わらず、この部屋の扉の向こう側には薄い部屋着に、お気に入りの犬の枕を抱いた紫苑が立っている。そしてドアを開けた俺に、少し眠気にとろけた、見ようによっては凄まじくえろい顔でこう言うのだ。
「ねぇねずみ、いっしょにねようよ」
と。
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ネズミと紫苑と変態とロリコンがすきです。ぴくしぶとついったひっそり。