忍者ブログ
No.6にマジLOVE1000%の非公式二次創作ブログ。ねたばれから変態までご機嫌よう。
[118]  [117]  [116]  [115]  [113]  [112]  [111]  [109]  [108]  [106]  [105
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ぴくすぶにあげた学パロの話。
ネズミにドライな紫苑さまとそんな紫苑に構ってほしいネズミの話。になるはずがいかんせん努力が足りなくて紫苑が口を開く前に力尽きたという悲劇。
続きそうな予感。
中途半端なアレですがよければ右下の「more」から!











嵐ではなく、雨もなければ風もない、それはすっきりと晴れた日の出会いだった。
ただどこかしら、ありふれた日々の中に隠されていた運命が動き出しそう気配をはらんだ、青い青い夏の日だった。






ラ イ タ ー は ど こ へ い っ た ?






がやがやと多くの生徒達が、体育館に向かって渡り廊下を歩いていく。夏服にほんの少し汗を滲ませながら各々うちわや下敷きで自分達を仰ぎ、約1ヶ月ぶりに顔を合わせた級友達と休み明けの会話を交わす。始業式は通例どおり、体育館で全校生徒が参加することになっていた。じっとしていてもじわりと汗ばむこの季節、冷房設備などもちろんない中すし詰め状態で約1時間耐えねばならない。みな一様に気だるげに、しかしそれでも素直に体育館へと足を向け歩いていた。
そんな生徒の流れの中からしれっと抜け出し、壁づたいに逆行しようとしたネズミに気づいたイヌカシが、その背中に声をかけた。

「おい、どこ行くんだよ」
「体育館シューズを忘れた。取りに行く」
「嘘つけ、始業式さぼる気だろ」
「分かってるなら止めるな」

HRまでには戻るさ、と言い置いてネズミはスタスタと歩き去っていく。背後でイヌカシとその側にいた女子が何か言った気がしたが、構わずに廊下を折れてそのまま裏庭に向かった。あそこならば人気もないし、体育館からも離れているので教師にも見つからないだろう。この暑い中、学校が始まっただけでも面倒だというのに、初日から校長やら生徒会長やらの長話を聞く気にはなれなかった。こんな時は、寝て過ごすに限る。久しぶりに図書室で本を読みたい気もしたが、あそこは常に駐在の司書がいる。始業式に参加していないことを咎められることが目に見えていたのだ諦めた。

裏庭の隅には小さな丘があり、その上に大きめの樹木が葉を茂らせている。その木陰の下で、しばらく寝ているつもりだった。そこはネズミの気に入りの場所だ。茂みの先の奥まった場所にあるため、普段からほとんど人が来ない。そもそもこの学校には整備された広い中庭があるので、裏庭、というよりはもはや小さな森に近いこの場所はいつも人気がなく、静かだった。
制服のポケットに手を突っ込んで、すっかり夏仕様に様変わりした裏庭をぼんやりと眺めながら歩く。休みの間手入れされなかったのか、様々な植物が花壇やフェンスを越えて茂り、強い緑の匂いがした。真っ青に輝く空の下、明るい日光を浴びて生命力を主張している。

サクサクと草を踏みつけ茂みを回りこみ、ネズミは目的の丘にたどり着いた。額に滲んだ汗を拭い、生い茂った樹の葉でできた木陰に座り込もうとして、さっきは死角になっていた側の樹の幹に背を預けるようにして座っている先客がいることに気がついた。
水色のパーカーにフードをかぶったその人物は、どうやら眠っているらしかった。始業式はもうすでに始まっているはずなので一瞬、部外者かとも思ったが、どう見てもネズミと同じ黒の学生服のズボンを履いている。おいおい始業初日そうそうサボりかよと自分のことは棚にあげて悪態をつきながら、ここまで来て今更移動するのも面倒で、ネズミはため息を吐いて腰を下ろした。
ふぅ、と一つ息をつく。樹の作る影は、ネズミともう一人を包んでもまだ十分な大きさがあった。心地よい涼しさを感じて瞼を閉じる。自分も寝る体勢に入るかと幹に背を預け後ろ手に地面に手をつくと、その指先に何かがあたった。

「ん?」

小石や枝とはちがう感触に閉じていた目を開けると、それはタバコの箱だった。もちろん、ネズミのものではない。こんなものを吸って咽や肺を自分から痛めるなんて馬鹿げている。ネズミは胡乱げに、タバコを挟んだ向こう側で眠っている人物を見た。重力に従って投げ出されたその左手は、タバコの側で力なく地面に落ちている。少し大きいらしいパーカーの裾から覗く手は意外にも白く細い器用そうな指をしていて、かるく開かれたその手のすぐ近くに火のつけられていない真新しいタバコが一本、所在なさげに転がっていた。どう見ても持ち主だ。
馬鹿だなこいつ、とネズミは鼻白む。
他人の喫煙に関してどうこう言う気はないし、吸いたいなら好きに吸えばいいと思うが、こんな大してレベルの高くない学校でもタバコが見つかればそれなりに処罰をくう。万が一にもとばっちりはごめんだと、ネズミはそのタバコをパーカー野郎の方に押し付けようとした。

その時、それまで凪いでいた風が急に強く吹きぬけた。
頭上に広がる樹の枝が音を立ててガサガサと揺れ、風圧にさらわれた葉が舞う。思わず片目を瞑ったネズミの側で、眠りこける人物の身体も強い風を受けて不安定に揺れた。パーカーのフードが捲れて、髪が風に踊る。

見たこともない、真っ白の髪だった。

老人のものとは違う、なめらかで、艶のある、透明に近い白だ。さらりと広がる髪は揺れた枝と葉の間から差し込む太陽の光を反射して、一本一本が美しく煌めく。息を詰める。思わず一瞬見とれていると、強い風圧にぐらりと傾いだ身体が幹から滑って倒れ込んできた。二人の間にあったタバコの箱を潰してぽすりと草の上に転がる。それを追うように白い髪がふわりと舞って、地面につい
たままのネズミの指先の上に一房落ちた。羽毛のように柔らかくて軽い感触。
どんな人物なのか、興味が沸いた。
首を動かして上からその顔を覗き込む。白髪に縁取られたまろやかな頬のラインに、バランスよく配置された小さめの鼻と、柔らかそうな唇。髪と同じ真っ白のたっぷりとした睫毛に縁取られた目は、閉じられていても大きいと分かる。
どくり、と心臓が一つ跳ねた。
甘やかな印象を持つ、中性的な顔立ち。タバコなんてちっとも似合わない、上品そうな。
妙に胸が騒ぐ。この面影を、知っているような気がした。
そんなはずはない、こんな奴は見たこともないと思うのに、ザワつく感覚を押さえられない。

(なんだ…?)

閉じられた白い瞼の奥の、瞳の色が無性に知りたくなる。思わず屈み込んだネズミの気配を感じたのか、穏やかな寝顔を晒していた人物が少し身じろぐ。その動きで、今まで草に押し付けられていた顔の左側が見えた。髪に隠れているが、左目の下あたりに赤い痕のようなものがある。
ほとんど無意識に、頬にかかる髪をのけようと手を伸ばしかけたその時、閉じられていた瞼がぱちりと開いた。中途半端に出しかけた手を引っ込めるのも忘れて、ネズミはその紅い、宝石のようのな瞳に魅入る。

その、瞬間。

ど、っと頭の中に流れ込んできたのは、奔流のような激しい映像の波と渦だ。街、人、森、血、舞台に…蜂?押し流されそうなその膨大な情報に眩暈を感じながら、ネズミはその中に白い髪の少年を見た。怒り、笑顔、涙。その瞳に、万感の感情を宿らせて立っていた。見たこともない自分とよく似た男の傍らに、彼は立っていた。
嵐のように通り過ぎた残像になかば呆然としながら、何度か瞬いて視線の焦点を合わすと、紅い瞳とぶつかった。それにハッとしたように大きく瞳を見開いたかと思うと、その少年はネズミを押しのけるようにして身を起こす。そのまま何も言わずに立ち上がり、足早に去って行こうとする。

「おい、」

引き止めてどうするかも分からないまま、それでもネズミは声をかけた。けれどその少年は振り返りもせずに、どんどん遠ざかっていってしまう。やがてその後姿も見えなくなると、木陰にはネズミとつぶれたタバコの箱だけが残された。
ふと手を伸ばし、箱の側に転がる1本を掴む。あの少年が吸おうとしたタバコだ。拾いあげたそれをペンのようにくるりと回しなんとなく唇に挟んでみると、校舎の方からチャイムの音が聞こえてきた。
ため息をつく。なんだかよく分からないが、とりあえず寝そこねたことだけは確かだった。
それと同時に、今まで感じたことのないほどの興味と好奇心が湧き上がってくる。

(あんたは一体どこの誰で、俺にとっての何なんだ?)

高揚する気分のままに口元をにやりと歪め、ネズミは立ち上がる。
つぶれた箱を拾いあげて唇に挟んだ一本を丁寧に戻すと、ズボンのポケットにそれを押し込んだ。
木陰から出て空を見上げる。
何かありえないことが起こっても決しておかしくないような、抜けるように青い青い空だった。
その眩しさに目を細め、ふとネズミは樹を振り返る。


ああ、ところで。





ライターはどこへ行った?
(これじゃあ、あんたのハートに火が点けられない)












PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
thanks


----------------------

*Clap ←メルフォをかねて。
hello
*master
水分
*about
ネズミと紫苑と変態とロリコンがすきです。ぴくしぶとついったひっそり。
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]