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No.6にマジLOVE1000%の非公式二次創作ブログ。ねたばれから変態までご機嫌よう。
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学パロ。









高校に入ってからつるむようになった白い髪をした天然の秀才は、紫苑といった。勉強が出来、ぼんやりと温厚で、誰にでも愛想がよく、親切で、基本的に微笑を浮かべているような人物だった。ネズミは自分でも、いつの間に彼と親しくなったのか今となってはもう思い出せずにいるのだが、警戒心の強いネズミがうっかりと接近を許してしまうほど、紫苑はしなやかに、それまで孤高の存在を貫いていたネズミに寄り添っていた。

紫苑とネズミは学校やそれ以外、ほとんどの時間を一緒に過ごすようになった。クラスこそ違ったが、休憩になると紫苑はよくネズミのクラスに顔を出した。そしてチャイムが鳴るきっちり1分前に、「また後で」と言って帰っていく。
昼食もよく二人でとった。紫苑が母の手作りパンを二人分持ってくることもあれば、たまに気まぐれを起こしたネズミが二人分の昼食を作ってくることもあった。そしてネズミのその日の気分によって、中庭だったり屋上だったり空き教室だったりと、様々な場所で他愛のない会話をしながら食事をする。食事を終えると眠くなって、そのままよく二人で眠った。
大抵の場合はチャイムの音で紫苑が目を覚まし、ネズミを起こして二人で教室に戻る。けれどネズミが本当に疲れている時―劇団の稽古やバイトが立て込んで、ろくに睡眠時間がとれない時がある―は、紫苑はそっと自分の水色のカーディガンを脱いでネズミにかけ、一人で教室に戻った。そしてネズミのクラスイメイトに、ネズミの体調不良を告げておくのだ。おかげでネズミは5限目の不在を、教師に咎められたことはない。
休日になれば、互いの家を行き来した。紫苑がネズミの本棚とそこから溢れた本だらけの部屋を片付けがてら読書に訪れたり、ネズミが紫苑の家で紫苑の母・火藍と3人で夕食を食べることもあれば、バイト帰りに泊まることもあった。

つかず離れず、寄り添う感覚はあれどすぎた干渉はしない。ネズミにとって理想の距離感を紫苑はまるで知っているように振る舞った。穏やかで、あたたかく、隣の居心地がいい。自分のように外見だけとは違う意味で、周囲から好かれる紫苑。彼のことを悪しざまに言う人物を、ネズミは見聞きしたことがない。
そんな風に基本的に誰からも好かれる紫苑だが、彼がネズミにするように世話を焼いたり構うのは、どうやらネズミ以外にはいないようだった。決して表には出さないが、そのことにネズミは、少なからず優越感を抱いていた。あの陽だまりのような人物を、独占しているという事実。紫苑は女子にも男子にも好かれているから、ネズミはしばしば、羨望の眼差しを向けられた。みんな羨ましいのだ。やさしい紫苑。あたまの良い紫苑。真っ白い髪と紅色の痣が美しく、どこか浮世離れしている紫苑。みなそんな彼の隣に立ちたいのだろう、とネズミは思った。
もっとも、「羨望の眼差しを向けられている」という点では紫苑も同じだったが。ネズミは、自分の容姿が他と比べて美しいことも、それを人が羨むことも自覚していた。そのうえで、面倒だという理由一点において、親しい友人というものを作らなかった。紫苑に出会うまでは。今ではもう、紫苑の隣にネズミが、ネズミの隣に紫苑がいることは当たり前のようになっているが、ネズミは自分の隣にいる紫苑が、そういった眼差しを向けられていることに気づいていた。ただ当の紫苑は本当にそういった面に鈍かったため、自分が羨ましがられていることには全く気づいていなかったが。

そんなわけで、“その時”までネズミは、なんの違和感もなく遠慮もなく、むしろ意識することもなく自然に、紫苑に「触れる」という行為を行っていた。読書中に邪魔そうだったサラサラの前髪を耳にかけてやったり、水たまりに足を突っ込みそうになった紫苑の男にしては細い腕を掴んで引っ張ってやったり、食後に満腹になって眠ってしまった柔らかい頬をつついてみたり。とにかくそういった、普通の接触をすることが出来ていた。当たり前といえば、当たり前のことなのだが。
けれど今、ネズミにはそれが許されない。否、正確には、“彼女”がそれを許さないのだ。

「その日」は唐突にやって来た。それはネズミに劇団の稽古もバイトもない日で、一週間ぶりに紫苑が家に来ることになっていた。劇団の先輩に面白い古典文学を借り、それを紫苑にも読ませてやるつもりで、ネズミは少しうきうきとした気分で放課後、紫苑が迎えに来るのを待っていた。けれど、少ない荷物をさっさとまとめ終えた頃、携帯がポケットで小さく振動した。メールらしい、と思って受信画面を開くと宛先には「紫苑」の表示。不思議に思いながらメールを開くと、紫苑にしては短い文面で

「ごめん。とても大事な用が出来たから、今日は行けない。本当にごめん」

と綴られていた。珍しいこともあるものだ、というか、紫苑となにか約束をして、それが紫苑の都合で中止になるという事態は初めてかもしれない。紫苑は部活もバイトもしておらず、たまにある用事といえば自宅でパン屋をしている母の手伝いで、それ以外のことは大抵の場合において、紫苑の中でネズミとの約束が優先されていたためだ。そんな彼が、今日はネズミを差し置くほどの「大事な用」が出来たという。少し、いや本音をいえばかなり、興味が湧いた。明日学校で会ったら、何があったのか聞いてやろう。そんなことを考えながら、その日ネズミは一人で帰宅した。例の古典文学を紫苑に朗読でもさせてやろうというささやかな企みや、一週間ぶりなので特別に作ってやるつもりだったシチューの材料、おそらく泊まりになるだろうと登校前に干しておいた布団、先ほどまでのほんの少しだけ浮ついていた気分は行き場をなくしてしまったが、なんてことはない。今日がだめなら、明日がある。どうせまた、あのふにゃりとした笑顔を浮かべて、紫苑はネズミの教室にやってくるのだ。
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ネズミと紫苑と変態とロリコンがすきです。ぴくしぶとついったひっそり。
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