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No.6にマジLOVE1000%の非公式二次創作ブログ。ねたばれから変態までご機嫌よう。
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先に眠ってしまったカランとリコの世話をしていた沙布も、みんなが食べ終えた皿やコップを片していた火藍も、いつの間にか眠ってしまった。子ども達が毛布にくるまっているすぐ側のホットカーペットの上で、あるいは暖かいリビングのソファで穏やかな寝息をたてる彼女達の身体に、紫苑はそっと毛布をかける。もはや毎年の恒例となってしまった光景を見渡し、紫苑はくすりと微笑んだ。イヌカシもずいぶんと前にシオンと2階の客間に引っ込んでしまったから、数時間前までの賑やかさが嘘のように、今この家は静かだ。けれどあまいチェリーケーキの残り香や、古いヒーターでぬくまった暖かい空気、大切な人たちの小さな寝息が、紫苑の胸を柔らかく満たしていた。黄色味がかった照明を部屋の入り口のスイッチでパチリと消しながら、しあわせだなぁ、と思わず呟く。

「紫苑、準備できたか」

ゴミをまとめ終えたらしいネズミが、見慣れたジャケットを羽織ってリビングのドアから顔を出す。紫苑もハンガーにかけてあった自分のコートとネズミのストールを持って入り口に向かう。雪が降ってもおかしくないくらい、今日は寒い。

「うん、大丈夫だ。それにしても、みんなよく寝てる」

ふふ、と笑う紫苑の肩越しにネズミはちらりとリビングに目をやる。火藍あたりは気づいていそうだが沙布はきっと、毎年みんなが寝静まった深夜に紫苑と自分が二人きりで近場の神社へ初詣に行っていることを知らない。そのことに、ネズミはほんの少し優越感を感じる。今年も紫苑は、自分のものなのだと実感できるから。

「さぁ、行こうか」






神社への距離は、ゆっくり歩いても5分ほどだ。ぽつりぽつりと小さな街灯があるだけの暗い道を、白く染まる息を吐き出しながら二人で歩く。刺すような夜の空気は澄んでいて美しいけれど凍りそうに冷たくて、お互いの手をしっかりと握って熱を分け合った。

「今年ももう終わりだね」
「ああ」
「色んなことがあった」
「あんたのママの店が雑誌とテレビで取り上げられた」
「おかげで母さんは大忙しだ。そういえばイヌカシのホテルも取材が来たって」
「へぇ、よかったじゃないか。そういや、力河のおっさんは身の程知らずにも春の町長選挙に立候補してたな。落ちたけど」
「でも4位だった。惜しかったよ」
「ばか、立候補者自体、4人しかいなかっただろ」
「え、そうだっけ…。あ、でも沙布は当選したよね、生徒会長」
「あの女のバイタリティに勝てる奴なんて早々いないさ」
「何事にも積極的なのは沙布のいい所だよ。行動力があるってことだし」
「ありすぎて、あんたのストーカー自力で捕まえてたもんな。俺は感動した」
「ストーカーって…ちょっと私物や服を持っていかれただけだ。出来心ってやつだと思うけど」
「出来心で同性の下着は盗まない」
「それにしたって君も沙布も、暴力はだめだ。あやうく彼は病院でニューイヤーを過ごすことになるところだった」
「殺されなかっただけ感謝すべきだ」
「ははは」
「あんたちっとも事の重大さを分かってないだろう」
「うん?あ、ついたよネズミ。お賽銭だして」
「本当、人の話きかないよなあんたって。もう慣れたけど。ほら5円」
「ありがとう。さ、お祈りしよう」






神社の境内の脇にある石段を登っていくと、小さく開けた夜景の見える場所がある。下の自動販売機でココアを買って石段をのぼり、古びたベンチに座ってそれを飲むのがネズミと紫苑の通例だった。決して広くはないそこに身を寄せ合って腰を下ろすと、赤くなった紫苑の鼻を隠すようにネズミが自分の長いストールを紫苑に巻いてやる。ネズミの肌のぬくみと匂いがして、紫苑はその瞬間、寒さも忘れてうっとりしてしまう。目をとろりと細めた紫苑の頬の髪を、ネズミの美しい指がそっと払う。鼻先まで埋もれたストールもずらしてしまうと、布に顔をうずめるようにして、紫苑の小さな唇にくちづけた。

「ん、」
「……なぁ、あんた何祈ったの」
「いつも通りだよ。みんなの幸せと、ずっと君と一緒にいられますようにって」
「毎年それじゃないか」
「だって他に思い浮かばないんだ。ネズミは?」
「俺?」
「うん」
「あんたとセックス、できますようにって」
「え、」
「そろそろ本格的に手出すから。今年は覚悟しておいてくださいよ陛下」
「…う、あ、う…うー………うん、わかった」
「いいんだ?」
「…うん。うん。君となら、僕はきっと嬉しいと思う」
「……」
「ネズミ?」
「なんだよ」
「もしかして照れてる」
「うるさい黙れ」
「む、」

じゃれるように何度も口付けを交わす。はっ、はっと小さな息遣いが布の隙間から漏れて、お互いの唇から少しずつ体温が上がっていく。冷え切った空気と世界の中で触れ合うその部分だけが柔らかくてあたたかくて、下方に煌めく町の彼方でニューイヤーを祝う小さな花火が上がるまで、ネズミと紫苑は幾度となくキスを交わして溶け合っていた。











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ぴくすぶにあげた学パロの話。
ネズミにドライな紫苑さまとそんな紫苑に構ってほしいネズミの話。になるはずがいかんせん努力が足りなくて紫苑が口を開く前に力尽きたという悲劇。
続きそうな予感。
中途半端なアレですがよければ右下の「more」から!









さら、さらさら。紫苑の透明に近い白髪が、平均的な高校生男子よりも華奢な肩にかかって揺れる様をぼんやりと眺める。日に透けてきらりと輝くそれを、もう何度目かは分からないが、美しいと思った。高校に入ってから伸ばし始めた紫苑の髪は、今はもう肩にかかるくらいまで伸びている。普段は縛っているので今日は珍しいなと思っていると、その視線に気づいた紫苑が「ゴム、忘れちゃったんだ」と言って少し困ったように笑う。「綺麗だからくくらなくていい」と口を開こうとしたら、クラスメイトの女子が3人やってきて、「今日はおろしてるんだねー」だとか「触ってもいいー?」だとか「きゃー、さらさらー」「へぇ、どれどれ」「俺も俺もー」とかなんとかもうすごいことになってしまった。もうこのクラスで紫苑の髪に触ってないやつ、いないんじゃないかってくらい。色んなやつから頭をもみくちゃにされて、それでもやっぱり紫苑は笑っている。そんな光景を見るたびに、チリチリと焼かれる胸の奥にあるその感情の名前を俺はもうとっくの昔から知っていて、だからもうあえてその衝動に逆らったりはしない。ガタン、席を立つと少し大きめの音が響く。ポケットにつっこんだ手で中をさぐって、使い慣れた髪ゴムを紫苑に手渡す。紫苑は素直に俺に感謝して、そっとその繊細な髪を束ねた。「ネズミありがとう」と微笑む紫苑に「どういたしまして」と返しながら俺はいつも、どうしたらこいつが自分だけのものになるだろうかと考えている。









今日はさむいね、と。1つの毛布に身を寄せ合いながら紫苑が呟いた。白くて細い指先を擦り合わせて、これ以上ないくらいネズミにくっつく。視界の端で自分の黒い髪と紫苑の白いかみが混ざって、紫苑のくちびるから漏れる白い吐息がネズミの頬をくすぐった。すこし赤くなっている紫苑の鼻先にくちびるを寄せると、ひやりとつめたい。きみはさむくないの、と問う紫苑のくちびるとそっと塞ぐ。そこは柔らかく、鼻先とちがってあたたかかった。紫苑はまだ息継ぎが下手なので、しばらくするとくちびるを離して、またくちづける。それを何度もなんども繰り返した。紫苑の繊細な指先が、そっとネズミの頬を撫でる。それがとても心地いい。ネズミも左手を紫苑の頬に添えて、さきほどまでよりも深く、キスをする。うすく開かれた紫苑のくちの奥に、あんたのおかげであたたかいよと、直接ことばをふきこんで笑った。









西ブロックの情報網とはなかなかのもので、紫苑をこちら側に連れてきてまだ間もないというのに、早くも同じ劇団員のほとんどがその存在を耳にしていた。とは言ってもイヌカシも言っていたように、「イヴが若い男を飼っているらしい」といった程度のおぼろげなものなのだが。ネズミが自分から紫苑のことを他人に漏らすこともなく、また紫苑はほぼイヌカシのホテルと自分のねぐらを行き来しているだけであるので、それ以上の情報は伝わっていないようだった。しかしそれは劇場花形役者イヴのこと、私生活の多くというよりはほとんどを誰にも語らない謎めいた看板役者が男を囲いだしたというのだから、誰もがその存在を多かれ少なかれ気にした。美貌の青年に首輪をつけられたその男は、いったいどんな人物なのか。さまざまな憶測が飛び交う。それはイヴが夜毎、気高いその身体を慰めさせる床上手の美丈夫か、はたまた攫われてきた観賞用の美少年か。それとも、生き別れた父、兄、奴隷かもしれない皆口々に囁いた。直接イヴに噂の真偽を尋ねてくる者もいたけれど、その全てをネズミは無視した。ネズミ自身、分かっていない。「紫苑」という存在は、自分にとって一体何なのだろう。









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ネズミと紫苑と変態とロリコンがすきです。ぴくしぶとついったひっそり。
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